「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」を見ました。
いろいろなところで悪い評判ばかり聞こえてくる本作、私はつまらない邦画(クソ邦画)を見るのを趣味の一つとしているクソ邦画ウォッチャーなのですが、今作も評判を聞き見てみました。
見た結果ですが、評判通りダメな映画でした・・・
この映画、物語の終盤にあるトンデモ展開が用意されているのですが、おそらく多くの人はこの展開に対して批判的な感想を述べていると思います。
私はその展開も知った上で見に行ったのですが、その終盤の展開がなかったとしても普通に駄作だなと思いました。
もちろんみんなが怒っている終盤の展開も当然ダメすぎるので、ダメのダメ押しとなり「令和初のクソ邦画」の称号を与えるのに充分な作品だなと思いました。
数あるクソ邦画の中でも間違いなく歴史に名が残る作品だと思うので個人的には見ることをオススメします。
ここでは問題となっている終盤の展開についてだけでなく、良かった点も挙げて(少ないですが)見た感想を書いて行きたいと思います。
それでは行ってみましょう!!
目次
あらすじ
少年リュカはゲマ率いる魔物たちに連れ去られた母マーサを取り戻すため、父パパスと旅を続けていた。
しかし、道中での魔物たちとの激闘により、パパスはリュカの目の前で非業の死を遂げてしまう。
それから10年後、故郷に戻ったリュカは「天空のつるぎと勇者を探し出せば、母を救うことができる」と書かれた父の日記を発見。
パパスの遺志を受け継ぎ、冒険へと旅立つ。次々と立ちはだかる試練の数々、ビアンカとフローラをめぐる究極の選択など、リュカの壮大な冒険が描かれる。
「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」予告編
スタッフ・キャスト・原題・上映時間など作品情報
総監督
山崎貴監督
八木竜一
花房真原作
堀井雄二脚本
山崎貴音楽
すぎやまこういちキャスト
リュカ/佐藤健
ビアンカ/有村架純
フローラ/波瑠
ヘンリー/坂口健太郎
パパス/山田孝之
サンチョ/ケンドーコバヤシ
プサン/安田顕
ブオーン/古田新太
ルドマン/松尾スズキ
スラりん/山寺宏一
ミルドラース/井浦新
マーサ/賀来千香子
ゲマ/吉田鋼太郎上映時間
103分公開日
2019年8月2日
映画.comより
「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」感想
この映画の原作は日本の国民的ゲームである「ドラゴンクエスト」シリーズの5作目1992年にスーパーファミコンで発売された「ドラゴンクエストV 天空の花嫁」(以下、ドラクエ5)です。
このドラクエ5はシリーズの中でも1,2を争うほど人気がある作品です。
これは主人公が少年時代から始まり、青年時代、親時代と大きく分けて3つパートで構成されています。
父親と一緒に旅をしていた少年が成長して結婚し、最終的には自分の子供と一緒に旅をするお話で三世代にわたる壮大な物語です。
このドラクエ5ですが私は小学生の時にリアルタイムでプレイした世代です。
そしてこれまでドラクエは本編が11作発売されていますが私はオンラインゲームであるドラクエ10を含めすべてプレイしています。
それくらい大好きなシリーズではあるのですが、私は当初この映画を見る予定はありませんでした。
理由は一つで私は本作の総監督である山崎貴監督が苦手なんですよね。
山崎監督がどのような作品を作ってきたのかは以下のwikipediaを確認してみてください。
「ALWAYS 三丁目の夕日」や「STAND BY ME ドラえもん」などは個人的には人生ワーストクラスで苦手です。苦手というか見ていてイライラしてしまうほど相性が悪いのですよね。
とはいえ日本をトップクラスのヒットメーカ。興行的にヒット作を連発するのはやはり凄いです。ヒット作品がないと業界全体が縮小してしまいますから。
そんなことから見に行く予定のなかった本作ですが、公開直後からSNS上で悪い意味でトンデモない出来だと話題になりました。
特にドラクエファンの人は烈火のごとく怒っている人も多くネガティブな意味で注目されていました。
そこまで評判が悪いとなると見たくなってしまうのが私です。
何年かに一度登場する邦画の駄作、私はこれをクソ邦画と呼んでいるのですが、このクソ邦画を見るのが趣味でして、久しぶりに期待の一本が出てきたか、と思い見に行くことにしました。
評判が悪い映画でも実際に見たら自分好みだったりするので、評判が悪いから見ないのではなく本当につまらないのか確かめるために見る、という感じです。
クソ邦画ウォッチャーとしてはある程度つまらない事自体楽しめるのでつまらなくてもOKです。面白ければそれはそれでラッキーですしね。
以下、見て良かったところと悪かったところをネタバレを含めて書いていきます。
良かったところ
映像がそこそこ綺麗でモンスターの造形が良い
この映画はCGアニメーションですが、グラフィックはとても良かったです。ピクサーなんかと比べてしまうとあれですが、個人的には映画として見て充分綺麗だと思いました。
その映像の中でもモンスターの描写はどれも良かったですね。
個人的に一番好きなのはモンスター側の実質的なボスであるゲマです。
ゲマはちゃんと気持ち悪くてとても良かったです。次と被ってしまいますがゲマは俳優の吉田鋼太郎さんが声を担当していてこれもかなり上手でした。
見た目も気持ち悪くて敵としてちゃんと憎たらしい、敵としての存在感は抜群でした。
佐藤健、山田孝之の声の演技が上手
主人公リュカの声を担当するのは佐藤健さんですが、上手でした。
有名な俳優さんやタレントさんが吹き替えや声優をやる場合、上手くない人だと声を聞いてその人の顔が思い浮かんでしまうのですが、リュカに関しては全くそれがありませんでした。
主人公の父親パパス役を担当した山田孝之さんもさすがでした。
そんな感じで声のキャスティングはとても良かったです。
悪かったところ
まずは問題の終盤の展開について
クライマックスで主人公リュカは宿敵ゲマを倒したあと、真のボスが登場します。
名前はゲーム版と同じミルドラースと名乗りますが、映画版では立ち位置が大きく違います。
そのミルドラースは唐突にこんな事を話し始めます。
これまで見ていた世界はVRのゲームの世界のお話だと。
これはドラクエ5のVR版リメイクで、主人公以外のキャラクタはすべてゲームの中のデータなのだと。
プレイヤはそのゲームを遊んでいる間はゲームであるという事を記憶を忘れると。
そして、なぜかプレイヤである主人公に対してこんな事を言ってきます。
「大人になれ」
ミルドラースはゲームが嫌いなハッカーが作ったウイルスなんだそうです。
そのゲームの世界を壊そうとするミルドラースに対して主人公は
「ゲームの体験も俺にとっては立派な現実の一部なんだーーー!!」
みたいな事を言ってミルドラースを倒してめでたしめでたし。といった具合です。
これだけ見ると中学生が考えたラノベみたいなお話です。でも本当にこのまんまの展開なんですね。
こういった実は世界は作りものでした、みたいないわゆるメタ展開の作品は珍しくありません。
最近ではデッドプールなんかがそうですよね。
で、メタ展開にするにはそれ相応の理由が必要です。ねとらぼさんのレビューでレゴムービーに関する事が書かれていましたがまさにそのとおりです。
レゴムービーも終盤にメタ展開がありますが、それは「レゴ」を題材としているからこそできる展開、メッセージになっていました。
で、今回のユア・ストーリーですが、ドラクエでやる理由がまったくないんですよね・・・
ドラクエではなく架空のゲームのお話だったとしても全く問題がないという。
むしろドラクエでは絶対にやってはいけない事ではないかと思います。
個人的にドラクエは良い言い方だと「王道」悪い言い方だと「おきまり」「マンネリ」を楽しむ作品だと思っています。
日本でのドラゴンクエストの位置付けって、海外での指輪物語のようなものだと思うんですよね。
だからみんなが見たい超王道の物語にすればいいんです。
ミルドラースを倒した後何事もなかったようにゲームの世界のキャラクタたちは主人公に話しかけてくるのですが、見ているこちらは「こいつらはすべて中身のないデータなんだよ」言われているのでそれにしか見えないんですよね。
ディズニーランドのパレード中にミッキーの頭をとって、
「ほら、ミッキーの中はこうなんだよ。でもここは夢の国。みんなで楽しもうね!」と言われたらいやみんな知ってるし、なんでここでそれ言うの?みたいな感じで白けると思うんですよ。
それをこの映画ではやってるんです。
そしてゲームの中が平和になったあと、ゲームの外側、現実の世界の話があるのかなと思ったら何もないんですよね。
どうやらメタ展開がやりたかっただけみたいなんですよね・・・
山崎監督は当初ドラクエの映画化の話を断っていたそうです。しかし、「エンディングで面白い展開を思いついた」ことから快諾したのだとか。
それがこの浅はかなメタ展開のことだとすると、悪気がないどころか自信をもって作っていた事になります。おそろしい・・・
この終盤の展開は多くの人が言っている通りほんとうにダメな作りだな、と思います。
で、この映画のダメなところは終盤以外も普通にダメ、というところがまた問題なんですよね。
少年時代をカットした代償が大きすぎる
そもそもドラクエ5は親子三代に渡る話ですからそれを1本の映画にする、ということ自体が間違っています。
指輪物語のように三部作、せめて前後編にしないと無理でしょう。
だから当初、山崎監督が映画の話を断っていた、というのはとても正しい判断なんですよね。
山崎監督は最後の展開を思いつかなければ良かったんですよ。
なんで思いついちゃったの。
そうすればこの映画は作られなかったんですから・・・
まあその上で1本にしているわけですが、まとめ方はとても上手だなと思いました。
1本にする上ではこのストーリーがベストじゃないかなと思います。
とはいえ、この映画では少年時代が冒頭の5分から10分程度で超ダイジェスト版で描かれて終わりです。
まるで「みんなこの辺の話は知ってるよね、だから省略するよ」と言われているような感じです。
ストーリーの補完を観客任せにしているくせに終盤ではその観客に対して「大人になれ」と小馬鹿にするんですからほんと酷いものです。
この少年時代の省略も終盤にVRでゲームを始める時にあらかじめ「少年時代はスキップ」という設定にしていた、という事が言い訳のように出てきます。
はっきり言ってこの作りではドラクエ5遊んだ事がない人にはほとんど意味がわからないのではないかと思いますね。
わかるのは父親がゲマに殺された、って事ぐらいだと思います。
で、この少年時代のエピソードって無駄がないどころか、すべてが中盤から後半に必要なものなんですよね。
レヌール城、妖精の世界、オーブを求める謎の青年、ベビーパンサーやヘンリー王子との出会いなど。
そして一番大きなところだとビアンカとのエピソードです。
少年時代に主人公はビアンカとお化けが出るというレヌール城を一緒に冒険をします。
その少年時代の思い出があるからこそ中盤の結婚相手を選ぶときに多くの人がビアンカを選ぶわけです。
そのエピソードをバッサリカットしているので青年時代にビアンカが出てきてもなんとも思わない(もちろんビアンカの父親の話も出てこない)し、それどころか普通にフローラの方がいいなと思えるんですよね。
VRを始める際にプレイヤが「フローラと結婚するぞ」と決めているのに最終的には結局ビアンカを選ぶことになるんですが、このVR版ドラクエ5はビアンカとしか結婚できない作りになっているんでしょうか・・・それはドラクエ5としては致命的ですよ。
音楽の使い方があまりにも雑すぎる
劇中の音楽は聞き慣れたお馴染みの曲たちが流れます。ゲームをプレイしている時のようにほとんどの場面で音楽が流れています。(まあゲーム中のお話なんですけどね)
音楽自体は素晴らしいのですが、使い方がとにかく酷かった。
まず、ドラクエ5のはずなのに他の作品の曲が流れます。
普通にドラクエ4の戦闘曲が流れた時はズッコケました・・・
そして映画の最後、エンドロールで流れるのはなんとドラクエ3のエンディング曲である「そして伝説へ・・・」です。
せめて最後くらいは5の曲かオリジナルの曲にするべきだと思うのですが間違ってますかね・・・
それくらい山崎貴はドラクエに思い入れがないってことですね。
で、最大の問題がドラゴンクエストといえばのあの曲「序曲」ももちろん流れます。
これもとても変でなぜか本編で3回も流れます。
ドラクエを象徴する曲なんですからオープニングかエンディング、それかクライマックス、のどこか1回ここぞというタイミングで使うべきだと思うのですが、本編で3回も流れのでえ、また流すの?と思わずにはいられませんでした。
こんな感じで全体的にとにかく雑でした。
演出が雑すぎる
ゲレゲレがすぐに主人公を思い出す
音楽だけでなく演出もとにかく雑です。
見てる人が誰でも気づくところだと、幼少期に離れ離れになったベビーパンサーのゲレゲレと青年時代に再開する時のこと。
原作だと「ビアンカのリボン」という道具を使うことで主人公のことを思い出すのですが、この映画では何もせずいきなり思い出します。これも少年時代をカットした弊害でしょう。
プロポーズするタイミングがおかしい
フローラと結婚する事になった主人公ですが、ビアンカのことが気になっている事に気づき断ってしまいます。
フローラの父親であるルドマンから婚約が破棄となった理由を「主人公がルドマンさんを怒らせてしまったから」という事にしておく、と説明されます。
その後、酒場で主人公はビアンカに結婚がなくなった事を説明します。その時周りの客も主人公のことを「可哀想な結婚相手」という形で見てくるのですが主人公はその場でビアンカに結婚を申し込んでしまいます。
これではまるでフローラとの結婚がダメになったからビアンカにすぐに乗り換えたように見えます。
こういった雑な演出があまりにも多すぎます。
もしこうのような雑な演出の理由を「VRゲームの中のお話だから」と言い訳するのだとするとそれはそれで「ゲームは設定が雑でもいい」と考えていることになるわけで、色々と失礼なわけです。
やはり作り手側はゲームに対する敬意がないのかなと感じてしまいます。
まとめです
ながながと書きましたが評判が悪いと知って上でさらにネタバレも見て、覚悟して見てもやはり駄作だった、というのが私の感想です。
だからといって見ないほうがいい、というつもりはありません。
むしろ個人的には一度見て見ることをオススメします。
みんながつまらないと言うから見ない、のではなく「おもしろい」「つまらない」というのはきちんと自分で見て判断するのが一番です。
評判が悪いものを実際に見たら予想外に楽しめた、というのはよくある事ですから。(もちろんその逆もあります。)
なのでこの映画も、楽しめるかもしれません。現にみんなが言うほど悪くなかった、という感想もみます。
映画なんて一本でも多く面白いと思えた方が良いに決まってますからね。
評判が悪いとはいえ話題作なのは間違いないのでお時間をみつけて是非チェックしてみてください。」
おしまい。