「ファースト・マン」を初日に観てきました。
人類で初めて月面に立った人、ニール・アームストロング船長の映画と聞いたら普通は伝記映画だと思いますよね。
私もそう思って観に行きました。
いちおう伝記映画ではあったのですが、普通の伝記映画とはかなり違うものだったんですね。
むしろ伝記映画というよりも体感映画でした。
観てる人がアームストロング船長になったような体験ができる作りになっているんですね。
これは1960年代、半世紀前の出来事を描いた映画です。当然コンピュータも性能が低く、機械や計器も多くがアナログな時代。宇宙船の軌道修正の計算をパイロットが手でしてるような状態です。
そんな1960年代にタイムマシンで連れていかれて、まるでブリキでできたような宇宙船に乗せられて、じゃあ今から月に行くぞ!
と、連れいかれるような体験ができるのがこの「ファースト・マン」です!
ではそんな映画を実際に観てどうだったのか早速行ってみましょう!!
目次
予告編
スタッフ・キャスト
監督
デイミアン・チャゼル製作
ウィク・ゴッドフリー
マーティ・ボーウェン
アイザック・クラウスナー
デイミアン・チャゼル製作総指揮
スティーブン・スピルバーグ
アダム・メリムズ
ジョシュ・シンガー原作
ジェームズ・R・ハンセン脚本
ジョシュ・シンガーキャスト
ライアン・ゴズリング/ニール・アームストロング
クレア・フォイ/ジャネット・アームストロング
ジェイソン・クラーク/エド・ホワイト
カイル・チャンドラー/ディーク・スレイトン
コリー・ストール/バズ・オルドリン原題
First Man上映時間
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141分
感想(一部ネタバレ)
伝記映画というよりも体験映画
実在の人物を映画化される場合、ドラマチックに見せるために過剰に演出したり場合によっては出来事の改変が行われることもあります。
たとえばクイーンの伝記映画「ボヘミアン・ラプソディ」ではボーカルのフレディがバンドメンバに自分がHIVに感染した事を告白するタイミングが事実とは違っていたり、クライマックスに描かれるチャリティイベント「ライブエイド」の前年に南アフリカのサンシティでライブを行って世界的に大バッシングを受けた事は完全になかった事になっています。
そのように演出、改変する事で物語をわかりやすくしたり、お客さんを感情移入させる事ができるわけです。
今回の「ファースト・マン」では人類で初めて月面に立ったニール・アームストロングの伝記映画です。
伝記映画ではあるのですが、二ール・アームストロングは感情を表に出さない事で知られており、普通の伝記映画として作ると主役なのに何を考えているのか分かりづらく感情移入できなくなってしまいます。
そこでこの映画ではニール・アームストロングの物語を見せるという形ではなく、観客にアームストロング船長と同じ体験をさせるという形をとっています。
どういう事かというと、宇宙でのシーンは一人称(アームストロング船長の)目線のカットや各パイロットのアップのカットを多用して、さも観客がアームストロング船長になったような、または同じ宇宙船に搭乗しているような演出がされています。
そのため、よく宇宙を舞台にした映画で見る
こんな場面はあまりでてきません。
そして宇宙の様子はコックピットについている小さな窓から見える景色しか映されません。
窓から見える景色は最初は青空が見えていたのが宇宙船が打ち上げられると段々と黒くなり、最終的には地球が見えるようになる。というような表現です。
訓練シーンも同様で宇宙での回転運動を制御するための訓練装置や月面着陸機の操縦練習シーンも一人称視点、顔のアップの場面がほとんどのため実際に訓練した人がみる風景を見る事ができます。
と同時いかに危険な事を行なっているのかがわかり観てて非常に怖くなります。
その後宇宙空間で機体が原因不明の回転をし始めて、回転を止められないどころかどんどん加速していくというトラブルが起きるシーンがあるのですが、観てる側もそこは事前に回転運動の訓練シーンを見て体験しているわけです。
で、宇宙空間でそのままの状態でいる事がいかに深刻で危険な状態なのか知っているので観ているとドキドキして焦ります。普通だったらパニックになっても仕方ない状態です。
しかし、そこはアームストロング船長。冷静沈着な判断、対応で乗り切る事ができます。その場面を見る事でいかに彼が凄い人物か、同じ船のクルーのような感覚で見る事ができます。
正直、自分があんな体験したら即「私はもう2度と宇宙行きません」と言いますね・・・
また、訓練中に親友に近い同僚たちが何人も亡くなっていきます。宇宙にいなくても常に死の危険があるわけです。
それでも彼は月に行くことを諦めたりするような事がありません。
なぜ月を目指すのか。
ニール・アームストロング表情を表に出しませんし。家族にもその事を話しません。その理由はクライマックスで明らかになりますが、そこも観ている側はずっと彼の目線で見ているのである程度予想ができる作りになっています。
初めて月に行くというのはどういう事か
アポロ11号は初めて月面着陸に成功したわけで、当たり前ですけど何もかも人類にとって初めての経験だったわけです。
月の表面はどのような感触なのか、今でこそ普通に立つ事ができるのはみんな知っていますがそれもわからないわけですよね。
月面探査機は着陸できたけど、もしかしたらどこかに柔らかい場所があるかもしれない。知らなければ最初の一歩は慎重になるはずです。
今では当たり前の事が当たり前じゃない時の事は気づきづらいので今回観ていてはっと気づかされました。
また、月から帰還した人は感染症などがないか人体に変化がないか調べるため、三週間ほど隔離されたという事も知らなかったので勉強になりました。
時代背景、歴史的背景はほぼ描かれない
1960年代のアメリカといえば「月面着陸」以外にも歴史的な事件、出来事が多くあります。
ケネディ大統領やキング牧師の暗殺。そしてベトナム戦争が始まるのも1960年代です。
そのような出来事は出来事は「ファースト・マン」では一切描かれませんし月面探査を行う理由やマーキュリー計画、ジェミニ計画で準備をしてからのアポロ計画についても説明がありません。
個人的には少し説明があってもよかったかなと思うところもあります。
しかし、それもニール・アームストロングの目線で話を組み立てているからわざとそういう作りにしたんでしょう。彼が月を目指すの事と世の中の情勢は関係ありませんから。
撮影は16mmと35mm、IMAXのカメラを使っての演出
「ファースト・マン」の撮影は通常の35mmカメラ以外に画質の荒い16mmフィルムのカメラ、そしてIMAXカメラを場面によって使い分けて撮影されています。これが素晴らしかった。
1960年代の質感を出すためにアームストロング家の家庭のシーンや宇宙船内のシーンでは画質が荒い16mmで撮影されています。
そしてクライマックスの月面シーンでは最新のIMAXカメラを使い高精細な映像を使って差別化しています。
月面探査機が月に着陸し、ハッチを開けるシーンがあります。そこでそれまで船内を映していたカメラが移動して船外、月面へ出て行く場面があります。
そこでは16mmのカメラからIMAXのカメラに切り替わり高精細になり画面の比率も変わる事で別世界に来たと感じる体験ができます。
音も外に出た瞬間に無になります。これは「2001年宇宙の旅」や「ゼロ・グラビティ」でも行なっていた見せ方でもあります。
この体験は自宅のテレビで絶対にできないものですから劇場で観る機会があれば(できればIMAXで)観ていただきたいです。
カメラのフォーマットの違いについてはYouTubeでも公開されていますので貼っておきます。(月面でのシーンのネタバレ的な映像があるので観る前に注意が必要です。)
まとめ
アポロ11号が月面着陸に成功したのは1969年。
ライト兄弟が空を飛んでからたった66年、リンドバーグが大西洋を単独横断飛行してから42年しか経っていない時の事です。
そう考えるといかにとんでもない偉業だったのかがわかります。
その偉業の瞬間を追体験できるのが「ファースト・マン」でした。
これを観れば誰でもファーストマンになる事ができます。
ただ「楽しい」「つまらない」だけではなくこのように様々な時代、人、世界を体験できるのが映画の魅力だと思っています。
「ファースト・マン」では劇場でしか体験できないものが観られるので是非チェックしていただきたいオススメの一本でした。