塚本晋也監督の新作「斬、」を公開初日に観てきました。
舞台挨拶付きの回を観たのですが、まさかのその舞台挨拶で登壇者が遅刻するというトラブルが発生。
当初舞台挨拶を予定していたスクリーンでは次の上映が控えているため、急遽場所を変えて行われる事になりました。
その後、急ごしらえで別の場所で行われた舞台挨拶はサービス満載で最終的には登壇者との握手会が行われるなどまさかの神イベントになりましたのでここでレポートしてみたいと思います。
目次
「斬、」鑑賞後、予定していた舞台挨拶に登壇者登場せず
「鉄男」「KOTOKO」「野火」などの作品で知られる塚本晋也監督の映画は自分にとって必修科目みたいなもので、公開されたら必ず観に行くようにしています。
今回ももちろん行く予定ではあったのですが公開の二週間ほど前でしょうか、ツイッターで立川シネマシティで舞台挨拶があるとの情報を得たので、折角だからと舞台挨拶付きの回を観に行ってみました。
舞台挨拶のある回っていくらか値段が高かったりするのですが、そこはさすが立川シネマシティ、通常回と差はなく、1300円でした。(会員の土日祝の価格です)
舞台挨拶があるのは2018年11月24日の16:40回の上映後でした。「斬、」は比較的短めの映画の為、上映時間は90分ほど。18:10頃に上映が終わりました。
「斬、」はやはり今回もとても良かった。まさかあの「野火」に連なる作品だったのですが、感想はまた別の機会に。
普通上映後の舞台挨拶というのは映画のエンドロールが終わった後に司会の人が出て来て、簡単な注意事項などの説明をした後に登壇者を呼び込むという流れなのですが、この日はエンドロール後出て来たのは劇場のスタッフ一人だけ。
そこで登壇者が劇場に到着していない事が知らされます。
スタッフ「登壇者を乗せたバスが渋滞にはまってしまい到着が大幅に遅れる見込みです」
この日は公開初日のため、渋谷、横浜と舞台挨拶を行い、その後に立川に来たんですね。
その横浜から立川へ向かう途中で渋滞にはまってしまったと。遅れてしまうのは仕方のない事ですが、続けてこんなアナウンスがありました。
スタッフ「ここのスクリーンでは次の上映があるため、この場所では舞台挨拶ができないかもしれません」
え、ここでできないならどこで舞台挨拶やるの?とみんな思ったはずです。
「斬、」監督と出演者を乗せたバスと電話を繋ぐ
そんな中、移動中の舞台挨拶登壇者の人たちと電話を繋ぐ事になりました。
プチ舞台挨拶です。
司会の人との会話がスピーカーから流れその後、塚本監督から順番に電話で挨拶をしてもらう事になりました。この回の登壇者は4名でした。
- 塚本晋也監督
- 池松壮亮さん
- 中村達也さん
- 前田隆成さん
(横浜までは蒼井優さんも参加されてたようですが立川では不参加でした。)
遅れてしまい申し訳ないと、と塚本監督は何度も謝っておられました。その分今日はスペシャルな夜にします、と約束してくれ、実際にそれが現実になります。
塚本監督の後に登場したのは主演の池松壮亮さんでした。
池松さん「こんばんは、蒼井優です」
とボケていました。
中村達也さん、前田隆成さんもジョークを言い、少し困惑気味だった劇場の雰囲気が少し和やかになりました。
そのあと立川シネマシティへ。全員でバス移動だが大渋滞。電話で会場と舞台挨拶開始。 pic.twitter.com/VoH7Wq6pgz
— 塚本晋也tsukamoto_shinya (@tsukamoto_shiny) November 24, 2018
全員から挨拶をしてもらったところで電話は切る事に。
そこで司会のスタッフの方からこの後の流れについて説明がありました。
この時の時刻が大体18時40分頃。
- 舞台挨拶の開始は19時(当初は18:10頃開始予定だった)
- 会場は別の場所(立川シネマシティのシネマツー)で行う
- 参加できない人にはチケット代を返金(+無料鑑賞券が渡される)
- 異動先の会場は座席がない為、体育座りで観てもらう事になる
立川シネマシティはシネマワンとシネマツーの2つの建物があります。これらは300メートルくらい離れているんですよね。
「斬、」を観たのはシネマワンだったのですが、ここからもう一つの建物シネマツーへ移動する事になりました。数百人がぞろぞろと民族大移動です。
場所を変えて舞台挨拶を敢行
民族大移動をし整列。
座席がなく体育座りをする事になると事前に説明がありましたが移動した先は
とてもじゃないですがイベントを行うような場所ではありませんでした。
そこは劇場のエレベータ前の小さなスペースでした。
スペースというより「廊下」といった表現が適しているような縦長の場所でした。
縦長の場所のため、最前列の人と最後列の人では登壇者までの距離がかなり違いました。25メートルくらいは離れていたと思います。
そんな場所に無理やり舞台を作り、スピーカーを置き、マイクをつないで手作り感満載の舞台挨拶が始まりました。
開始時刻は予定通り19時ちょうど。
塚本監督の挨拶
- 前作の「野火」は戦後70年ということもあり反響、共感をいただいた
- しかし世の中はどんどん戦争に向かって進んでいるように感じており今回の「斬、」を作るきっかけになった
- 「斬、」のアイデアは20年ほど前にあったがタイミングがマッチし作ることになった
主演の池松さんの挨拶
- 27歳で次に何をやろうかと思った時に元々ファンだった塚本監督の作品に出たいと思いダメ元でマネージャ経由でコンタクトをとってもらったら会える事になった
- 塚本監督も「斬、」のプロットを考えたタイミングで主演は池松さんだと想定していたという話を会ってした
- 「斬、」のような作品が世の中に出る現在は良くない時代なのかもしれない
- 今やらないといけない気がして叫びや祈りを込める事ができ格別な想いで初日を迎えられた
中村さん、前田さんと挨拶を行い、2周目。
テーマは「斬、」の配役について、と蒼井優さんについて。
塚本監督の出演者に対するコメント
- 「斬、」は初めから池松さんに主演を演じてもらう事を前提に準備していた
- 池松さんとはセッションするように作品を作る事ができた
- 蒼井さんは作品の中で特に大変な役となるため、それを演じる事ができる人として出てもらえないかとお願いした
- 前田さんは作品の中でもみんなの弟的な役だが現場でも同じようにみんなから可愛がられるような人が必要だと想いオーディションで選んだ
池松さんの各共演者に対する印象
- 蒼井さんはお好み焼きとかき氷が大好き。虫が苦手で撮影中、腰に刀ではなくハエたたきを刺していた
- 中村さんは初めて一緒に仕事した。本当に怖かったが心を惹かれた
- 前田さんは長い期間一緒に殺陣の練習をし、木刀が3本折れた。それだけパワーをぶつけてくれて受けて立つには最高の相手だった
中村さんの蒼井さんに対する印象
- 蒼井さんとの共演シーンは少なかったが、そのシーンは蒼井さんが酷い目にあう場面だった。しかし、私は悪くありません(笑)
前田さんの蒼井さんに対する印象
- 蒼井さんはずっと役名から「いっちゃん、いっちゃん」と呼んでくれるなど弟のように親切にしてくれた。撮影後「いっちゃんって本当の名前なんていうんだっけ?」と言われた。
ここで時間がきた為、最後に一言ずつコメントをいただいた。
最後の塚本監督のコメント
- 観終わった後、居心地がわるくすっきりしない気持ちになると思うがすっきりしないように作った。その事について色々と考えていただければありがたい。
最後の池松さんのコメント
- はっきり言って僕はこの映画は反戦映画だと思っている
- 移動中に綺麗な夕焼けが見え、遅れたにも関わらず暖かく迎えてもらえいい初日になった。みなさんが平和である事を願っています。
これで舞台挨拶は終了。ですがそれだけでは終わりませんでした。
なんと到着が遅れてしまったということもあり、会場を出る際に
登壇者の方全員と握手ができる事になりました!
来ていたお客さんのうちおそらく半分くらいは池松さんファンとみられる方たちだったので特にそういった方達はよろこんでいました。
立川シネマシティ。
ほぼ全員のお客様が残ってくださり場所を移しての舞台挨拶の続き。終了すると、俳優さんは観客全員を握手で送り出し、お詫びと感謝を表してくださった。申し訳ないことになりましたが、お客さんは、また観に来る、と多くの方が言ってくださった。 pic.twitter.com/oGJQOuxNGk— 塚本晋也tsukamoto_shinya (@tsukamoto_shiny) November 24, 2018
まとめ
なんとも予期しないトラブルのあった舞台挨拶でしたがあんな場所で舞台挨拶をみる事は今後ないでしょう。
そう言った意味でもとても貴重な体験となりましたし、忘れられない映画にもなりました。
「斬、」作品自体とても重厚で、見終えた後どんよりとした気持ちになるかもしれませんが、とても素晴らしい映画です。
「野火」に比べると人気、実力のある役者さんが出ている事もあり、かなり観やすいと思うので是非とも一人でも多くの方に観ていただきたいです。